救急看護

頭部外傷患者の看護と戦略・戦術のまとめ①

頭部外傷患者が救急に受診・搬送されることは多いと思います。
その中で、どういった治療方針でどういう対処が必要かを知らないと看護師としてどう動いたらいいのかわからないです。
そういった、戦略と戦術を知りながら、看護師としてできることを実践していきたいという思いからこの内容をまとめました。

初期診療について

外傷患者は基本的にABCDEアプローチを行います。
(外傷看護の一般的な流れはこちらで紹介しています)

また、重症頭部外傷の約30%が低血圧や低酸素を認めており、頭部外傷に目を奪われ呼吸や循環の評価がおろそかになることがある。

目に見える頭部外傷よりもABCの安定化をまず図ることが大切になります。

気道確保

ABCDEアプローチの「A」にあたります。

気道に問題があり気道確保する場合、経時的に神経所見が観察できるよう鎮静薬・筋弛緩薬は短時間作用発現型の薬剤を使用します。

薬剤の効果により低血圧になることがあるので使用する薬剤の特徴を知っておく必要があります。

呼吸管理

ADCDEアプローチの「B」にあたります。

酸素化と換気の評価を行い、生命の危険が無いと判断されるまでは高濃度酸素(リザーバー付きマスク10~15L/分)を投与する。

初期診療における呼吸管理の目標

①SpO₂>95%
②PaO₂>90mmHg
③PaCO₂またはETCO₂の値が以下の通り
頭蓋内圧亢進時:30~35mmHg
頭蓋内圧正常時:35~45mmHg

循環管理

ABCDEアプローチの「C」にあたります。

迅速な止血によりショックを予防。
ショックになった場合は早期に対応が必要です。

他部位の損傷によるショックに対して急速輸液負荷等が必要になった場合、脳血流の回復に伴う脳血管床の急激な拡張により頭蓋内圧亢進をきたすことがあるため、輸液中の神経所見の変化に注意が必要になります。

「切迫するD」の認識と対応

Primary Surveyで「切迫するD」を認めた場合、気管挿管の適応となります。

切迫するD

①GCS合計8点以下
②GCS合計点が経過中に2点以上低下
③脳ヘルニア徴候(瞳孔不同、片麻痺、Cushing減少)がある
いずれかがあれば「切迫するD」となる。

気管挿管や吸引、バッグバルブマスクの準備が必要になります。
併せて、脳神経外科医への連絡も必要です。

「talk and deteriorate」のような会話していた患者が突然切迫するDになることがあるので、繰り返し意識レベル・神経所見の確認が必要になります。

これらは、高齢者に多く、特に抗凝固薬や抗血小板薬を内服している場合に多い。

Primary Surveyでは「切迫するD」とショックを呈している場合、呼吸・循環の安定化が優先されます

そのため、「切迫するD」を認めていてもすぐにCT検査に行くのではなく、止血術等で呼吸・循環を安定化させなければいけません。

体温管理

ABCDEアプローチの「E」にあたります。

高体温は脳損傷に悪影響が出るため、平温を維持します。

単独頭部外傷で低体温を合併している場合は、急な復温をすることで頭蓋内圧亢進を誘発することがあるので復温中の神経所見の変化を見逃さないようにしないといけません。

Secondary survey

頭部外傷の初期診療においては頭部CT検査が第一選択の検査になります。

緊急CT検査ができるよう、他部署との連携が必要になります。

頭蓋骨の評価でX線検査はsecondary surveyの中で行います。
撮影方法は正面・側面・タウン撮影の3方向が一般的です。

MRI検査はびまん性軸索損傷の診断に有効ですが、受傷後急性期の治療に大きく影響することがないため、初期評価でMRI検査はする必要はないといわれています。

一方、CTAは外傷初期診療に段階から、脳血管損傷の評価が簡便に可能で検査の感度は72.7%と言われています。遠位になるほど診断能が落ちるためCTAでは不明慮な場合などは脳血管造影検査をすることになります。

頭部外傷では上述のようにCT検査などがSecondary surveyで行われますが、この段階では解剖学的にも全身を観察する必要があります。
看護師が事前に準備するものや観察項目をまとめます。

準備するもの

・ペンライト
・瞳孔スケール
・舌圧子
・耳鏡
・喉頭鏡
・胃管
・ガーゼまたはろ紙(ダブルリング試験に使用)
・吸引一式
・カメラ

観察項目

・頭痛
・視力低下
・複視
・対光反射(間接対光反射も行う)
・聴力障害
・咬合障害
・頭皮や顔面の創傷
・頭部・顔面の陥没や血腫
・開放性頭蓋骨骨折の有無
・外耳孔、外鼻孔、口腔内の出血
・耳介項部の出血(バトル徴候)
・眼窩周囲の皮下出血(パンダの眼)

このほかにも観察項目はありますが、代表的なものを挙げさせていただきました。

また、小児の頭部外傷では放射線の影響も考慮し、CT検査を行うかの判断が必要になってきます。
そういったときに、PECARNというアルゴリズムを活用することで検査の必要性を判断できます。

PECARNについて

重症頭部外傷の特徴

凝固線溶系異常

脳組織にはトロンボプラスチンが含まれ、脳実質への損傷後それが血流に入り、止血凝固反応を障害します。
さらに、損傷を受けた脳血管内皮が血小板と凝固カスケードを活性化し、血管内血栓形成と凝固因子消費を引き起こしてDICへと進展する。

頭部外傷のDダイマー値は受傷後3時間をピークとします。
重症頭部外傷ではDダイマー値の上昇が遷延することがあります。

線溶系亢進の時間帯に血腫除去術を行うと止血困難な状況に陥り、予後不良になるため、慎重な対応が必要になります。

呼吸系異常

急性肺障害(ALI)は頭部外傷患者の約20~30%で認め、ALIが悪化すると神経学的予後をさらに悪化させ、死亡率は2倍以上になるといわれています。

ALIの要因として神経原性肺水腫(NPE)が挙げられます。
陽圧換気により改善することが多いですが、一過性の低酸素の原因になるため注意が必要です。
モニター管理、聴診をすることで把握することができます。

また、頭部外傷患者の肺炎は以下のことが影響し早期に発症する。
・抗炎症性サイトカインによる免疫抑制
・ICPコントロールのための低体温
・バルビツレート療法

最後に頭部外傷

一般的な外傷患者の対応はこちらを参考にしてください。

今回は一般的なものに加えて、頭部外傷に必要な事項をまとめています。
皆さんの参考になれば幸いです。
頭部外傷患者の治療戦略・戦術については「頭部外傷患者の看護と戦略・戦術のまとめ②」を参考にしてください。

頭部外傷患者の看護と戦略・戦術②